ふと訪れた喫茶スライドのマスターにプレゼンの極意について教えてもらうことになった製薬会社営業(MR)の会社員Yという設定でやっています。
製薬企業のプロモーションにおいては以前のお話のように制限が多く設定されてるんですよね。
そうなんです。営業の方法が他の業界とは少し異なるようですね。
そのプロモーションを補助する資材についても制限があったりするんですか。
もちろん営業を補助する資材なのでそこにも制限があります。本日はどのようなもの資材があるか今回ご紹介します。
プロモーションに制限があるように使用する資材についても作成の際に様々な制限が設けられており、基本的に各社以下にご紹介するような基本資材を用いてプロモーションを行っています。
総合製品情報概要
総合製品情報概要とは、個々の医療用医薬品に関する正確な情報を医療関係者に伝達し、その製品の適正な使用を推進することを目的として作成される資材で、その製品の全体像を記載したものをいいます。
製品の詳細が記載されている資材で様々な項目が記載されているためページ数が多く、制限も多いためプロモーション用に作成される資材というわけではないのですが、情報量が多いため医療関係者への要望に応えられる頼りになる資材です。
記載内容は以下のように決まっています。
総合製品情報概要の記載内容
■開発の経緯
■特徴(性)
■製品情報
■臨床成績
■薬物動態
■薬効薬理
■安全性薬理試験及び毒性試験
■有効成分に関する理化学的知見
■製剤学的事項
■取扱い上の注意包装関連情報〔承認番号、承認年月、薬価基準収載年月、販売開始年月、効能又は効果追加承認年月、再審査期間満了年月又は再審査結果公表年月、再評価結果公表年月(ただし品質に係わる再評価結果を除く)、承認条件、投与期間制限医薬品に関する情報〕
■主要文献
■製造販売業者の氏名又は名称及び住所(文献請求先及び問い合わせ先を含む)
特定項目製品情報概要
総合製品情報概要のプロモーション色を強くした資材です。ページ数も1枚ペラ~12ページものなど要点を絞って作成しているので医療関係者がぱっと読んで理解しやすい資料で、営業としても伝えたいことをわかりやすく伝えることが出来る使用しやすい資料です。
製品情報概要のように必須記載項目の制限があるわけではないので汎用性のある資材です。
インタビューフォーム
インタビューフォームとは、処方箋医薬品の添付文書では不十分な情報を補うために企業から提供される総合的な情報提供書です。 日本病院薬剤師会がルールを策定して、作成と配布を製薬企業に依頼している。
記載内容は以下のように決まっています。
インタビューフォームの記載内容
■概要に関する項目:開発の経緯や製品の治療学的・製剤学的特性
■名称に関する項目:販売名や一般名、構造式・分子式・化学名など
■有効成分に関する項目:外観や溶解性、有効成分の安定性や確認試験など
■製剤に関する項目:剤型・組成・調整法や生物学的試験、配合変化など
■治療に関する項目:効能又は効果、用法及び用量、臨床成績など
■薬効薬理に関する項目:薬理作用など
■薬物動態に関する項目:血中濃度の推移・測定法、薬物速度論的パラメータ。ADMEなど
■安全性(使用上の注意等)に関する項目:警告・禁忌、効能又は効果、用法及び用量に関する使用上の注意とその理由、相互作用、副作用、特殊患者への投与について
■非臨床試験に関する項目:薬理試験・毒性試験
■管理的事項に関する項目:規制区分・貯法・包装・各種コードなど
使用上の注意の解説
新医薬品の適正使用に必須となる「使用上の注意」について、その記載の根拠をわかりやすく説明したもので、基本的な安全対策として医療機関へ提供・説明し適正使用を促進する資材です。
使用上の注意の解説の記載内容
■警告・禁忌
■効能又は効果、用法及び用量(関連する注意)
■重要な基本的注意
■特定の背景を有する患者に関する注意
■相互作用
■副作用
■臨床検査結果に及ぼす影響(合併症/腎・肝機能障害/妊産婦/小児/高齢者)
■過量投与適用上の注意その他の注意
適正使用ガイド
適正な患者の選択、投与直前の投与可否の判断、主な副作用と対策、減量・休薬等について、症例経過を含めて紹介する資材です。
これまでご紹介してきた総合製品情報概要やインタビューフォームは網羅性という面でメリットのある資材ですが、これらとは異なり本当にその薬剤を使用するときの為に必要な内容がわかりやすく構成されたものです。
記載内容に定められた基準はないですが、だいたい各社こんな感じです。
適正使用ガイドの主な記載内容
■患者選択における注意点
■インフォームドコンセント(患者説明)について
■投与方法
■副作用とその対策
■調整法
■安全性情報
安全性情報
多くの医薬品では特徴的な副作用というのが存在します。
その製品に特に注意が必要な副作用などの安全性情報を紹介した資材です。
特徴的な副作用がある場合などはそのコントロール方法や注意を要する前駆症状などを紹介しています。
症例報告などの例を持って紹介しています。
特徴的な副作用については、新規で納入された医薬品などで使用する先生がその事例をコントロールできるよう先にお伝えしておく必要があります。
患者への不利益はもちろんのこと、使用する先生方にはその医薬品の使用感というものがあります。特徴的な副作用を事前に伝えないことでその製品への苦手意識をもたれる可能性もあります。さらに使用されている患者さんへの今後の治療方針についての説明なども必要なのに事前情報がないと大変です。
未知の副作用などは集積していくことでコントロール方法が判明し安全性情報として資材化されることもあります。
学会・講演会要旨集
各社製薬企業は営業活動の一環で著名な先生を招聘して講演会を行ったり、学会取材やスポンサードシンポジウムなどを行っており、製薬企業からではなく同業者の先生方が講演を行うので聴講する先生方にとても有益な情報が得られます。
最近では、WEB講演会なども実施されていますね。
その中で、その疾患の啓発を行ったり、製品について有益なお話をしていただけるなどの場合があり、その内容を資材化したものがこの学会・講演会要旨集です。
企業によっては最新の学会情報をパンフレット化することにより、いち早く情報提供を行えるという信頼を勝ち得たり、最新の治療についての報告から先生の治療方針を聞き取ったりといったことにも利用します。
種類としては以下のようなものの要旨集が思いつきます。
学会・講演会要旨集の種類
●自社企画講演会
●国内・海外学会
●学会スポンサードシンポジウム
●WEB講演会
疾患解説資材
疾患つまり病気については癌や花粉症といった有名なものから希少疾病とよばれる特殊なものも多く存在します。その疾患についての知識を広めていくことが製薬業界の責務でもあり、ひいてはその疾患に効果のある製品の売り上げにもつながってきます。
内容としては様々ございますが、以下のような内容を含んでいます。
疾患解説資材の主な記載内容
■その疾患とは
■その疾患の症状
■その疾患の前駆症状
■その疾患の治療方法
■その疾患のガイドライン情報 など
病名の確定診断というのは難しいものであるため、その疾患であると確定できるような内容であれば理想的です。その病気かもしれないものへの医薬品の使用というのは、患者さんへの不利益にもなりますし、売上としても使ってくれているのだから一見メリットがありそうですが、「効かない」「変な副作用がでる」という印象を持たれてしまうと今後継続して使用していただけなくなります。
その医薬品はその疾患に効果があると検証試験で結果を出しているはずなので間違いない疾患にその医薬品を届けるようにしましょう。
プレゼンテーション用コンテンツ
プレゼンテーション用コンテンツは、『製品説明に用いるコンテンツ(ビジュアルエイドを含む)』『タ
ブレット型端末用デジタルコンテンツ』等、MR等が医療関係者に説明する際に用いる資材です。
上記で今までに紹介したような資材をプレゼンテーション用コンテンツ化したような資材のため汎用性が高いです。
特徴としてはぱっとわかりやすいビジュアルで理解しやすいようということです。MRなどが営業の中で利用したり、説明会などで使用したりするために活用されます。
ホームページ(医療関係者用)
今までもそうでしたが、このコロナ禍においてWEBへの需要は大きく高まっています。
コロナウイルスという感染にかかわるものなので、医療機関は大忙しです。営業からウイルス感染が起きたなんてことになったらもう大変でしょう。病院では訪問規制が多くしかれるようになりMRからの直接営業が難しい時代になりました。これらのことから医療関係者の情報収集源が大きく変わり、WEBへの重要性というのが高まってきました。
これまでご紹介してきたのはパンフレットであったり、プレゼン資材であり、直接面談を必要としたものですが、それが難しい、かつ、医療関係者が必要な時に必要なことのみ確認できるツールとして各社のホームページが重要視されています。
基本的に各社動向を確認すると上記の資材のうち、プロモーション色を消したものについてはWEB化が可能だと思われます。
若干プロモーション色が強いかもしれないものでいうとWEBサイトなので動画などの掲載が可能です。
その動画コンテンツであったり、WEB講演会などを利用したものが使われています。
また、上記資材をダウンロードできたりする企業ホームページなどもあり、多種多様な運用が行われています。
eDTL
医師会員サイトでその製品情報を期間限定で紹介するコンテンツのことをいいます。
このページをクリックしたら会員にポイントがもらえるなどの工夫があるので、医師の目に触れる機会が増えるツールです。
ホームページを充実させても、新規コンテンツを作っても宣伝しないとホームページを見にこなければそれがわからないですよね。
また、医薬品は医療関係者以外の人の目に触れるような広告は行えないという規制がありますので、新規コンテンツを紹介することはなかなか難しいです。
そこでホームページへの流入を行うといった目的でも利用が可能です。
また、これらの資材は医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領などのルールによって作成されています。
作成要領にご興味ある方は以下に概要触れているのでご覧いただけますと幸いです。
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