有効性を表現する際のNG表現
明日は得意先でプレゼンだ!この製品はめちゃめちゃ効いて、効能効果の他にも様々な疾患に効果があるんです~っグラフも尺度変えたら効果がありそうにみえるな・・・よし出来た!!
ちょっと待ってください。その表現まずいですよね。ギャグですか?
何がですか?
・・・医療用医薬品の資材作成の際には様々なルールがあり、表現方法には制限があることをご存知ないですか?あなたのせいで業務停止させられちゃいますよ。
今回はこのうち有効性における表現について考えていきましょう。
医療用医薬品広告における制限について
医療用医薬品の資材作成の際には様々なルールがあり、表現方法には制限が多くあります。
それもそのはず、生命に関わるものですので、
営業さんの”効きます!”とか、”安全です!”とかいった言葉で
エンドユーザーの患者さんに悪い影響がでれば大問題です。
MRは医療関係者にフラットに治療を考えてもらう為のお手伝いをする役割です。
MRのお仕事については過去に触れているのでご興味あれば以下ブログをご覧ください。
なので、製品紹介の際の表現については慎重に言葉を選ぶ必要があるのです。
以下に有効性を紹介する際のNG表現についてご紹介します。
虚偽な表現
嘘ついたらだめです。当たり前ですよね。
ただ、この医薬品業界では根拠が無いというのも虚偽という扱いです。
もちろん誤記や情報不足も伝わり方で虚偽扱いなので十分注意する必要があるでしょう。
事例と対策
【事例1】有意差がないもしくは統計学的解析が行われていないのに優れていると表現
ちょっと有効性評価が上を言っていたからといって統計的有意差がなければ優れているという表現はできません。
また、仮にすごく2群間で効果に差があった場合でも統計解析を行っていなかったり、事前計画していなかったりする場合は、優れているという表現はできません。
【事例2】COIが(あるのに)書いていない
利益相反(COI)は、製薬企業が関与した臨床研究の結果について、臨床研究の研究者(医療関係者等)との関与について明らかにするために記載します。
これが書かれていないと、どう思いますか?
これが書かれていないと、どう思いますか?
なんだか不正を疑っちゃいますね
上記のように考える方もいるので企業としてもこういった面で得しません。しっかりと記載するようにしましょう。
また、
✓出典論文が古い(COIを現在のように重視していない)
✓主論文データをもとにした解析論文のため著者との直接的なCOIはない(だが、主論文に掲載されている臨床試験にはCOIがある)など、
出典中に記載が無い場合もあるので、臨床試験成績を紹介する場合は必ず社内にて関与があったかどうか確認して掲載するようにしましょう。
2019年の作成要領改訂からは、関連企業においてもCOIの記載が必須となりましたので関連企業にも確認することをお忘れなく!
【事例3】誤記
人間ミスはありますよ~仕方ないじゃないですか。
ですが、このミスが医療業界では人の生死に関わるわけですので社内でミスをなくす工夫が必要にあります。
特に、全て、全く、いずれにおいてもなど全体をまとめるような表現をする場合は本当にそうなのかしっかり確認しておく必要があるでしょう。
【例】
✓ いずれのサブグループ間でも差が無かった。👈サブグループ複数あるけど本当に?
✓ 全ての時点で製品Aが優れていた。👈有意差ない期間が本当にひとつもない?
科学的根拠に乏しい表現
上記でご紹介した虚偽な表現と同じ扱いです。
全く根拠がないのはもちろんNGなのですが、
「そこまでいえないでしょっ!」
といったような科学的な根拠が十分でない表現についても控えるべきです。
事例と対策
【事例1】小数例や特殊な症例群において得られた結果で表現
症例報告などの結果を用いて、効果がありそうですというのは根拠に欠けますよね。
特殊な事例などを例にとり、その製品の効果であるという表現はやめましょう。
【事例2】検証的結果が得られていないのに優れたという表現
いくら2群間以上のデータで自社製品に有利な差が得られても、検証的な結果でなければ優れたという表現はできません。
検証的試験で検証されているのは、基本的に主要評価項目のみです。
副次評価項目やサブグループ解析は探索的結果ですので検証された結果ではないという点についても注意しましょう。
そもそも解析などを行っていない場合は、両群間の差異について触れることもNGです!
基本的に、
●検証的な結果
●検証的な結果では無いが統計解析を行った結果
●解析を行っていない結果
があります。
そのどれなのかによって、結果記載の表現は以下のように制限されます。
製薬協:医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領
そのため、以下の例のような、統計上差は無いが、なんか良さそうという表現はNG表現にあたります。
【NG例】
✓ 大きな差は見られなかった。
✓ 有意差はないが●●スコアをB群よりも下げた。
✓ 有意差はないが再発リスクを下げることが示唆された。
【事例3】動物実験の結果を臨床の効果に結び付ける表現
結果が得られているからといって、臨床研究、つまりヒトで試していない結果から、効果がありますという表現はできません。
処方箋医薬品は、その製品でしっかりと臨床研究を行い、当局でその疾患に対する効能効果による承認を得られた後に使われる物です。
誇大・強調表現
おおげさな表現をしたり、特定の、一部の効果を強調するなどの表現もNG表現です。
歯磨き粉のCMを思い出してください。
歯がきれいになる表現をする際、少し汚れが残っている状態になっているのは、その商品を使って歯を磨くと”完璧に歯がきれいになる”という誇大表現を避けるためにあります。
人によって感じ方、考え方は様々ですので注意しましょう。
事例と対策
【事例1】おおげさな副詞を用いた強調表現
完全に、速やかに、安全に、とても、全く、絶対・・・などの表現は注意する必要があります。
マークシートのテストの注意点みたいですね。
これらの表現には、見る側の主観が入り交じる可能性もありますし、薬の効き目などは人によって大きく異なります。
効果の早さを例にとっても、評価はひとそれぞれですので注意しましょう。
【事例2】オピニオンリーダーを使っての案内
有名な医師などがあたかもその製品を勧めていますと見える内容はNGです。
お勧めですと言わせたり、
十分に根拠がない医師個人の意見を宣伝に用いたりすることはもちろんのこと、
医療関係者等の肖像写真を主体とした紙面構成の資材を作成するだけでもOUTです。
【事例3】グラフや図表への強調
グラフや図表はぱっと見わかりやすくプロモーションによく用いられます。
そのため、プロモーションを受ける側もじっくり見なければ誤解してしまうことがあります。
グラフでいうと評価縦軸のグラフ尺度を変更したり、矢印などで対象薬との差を強調したりしてはいけません。
ガイドラインに掲載されている表を引用する場合などは、都合の良い部分のみを抜粋したり、表内で自社品のみを枠囲いや太字にして目立たりという表現についても強調表現といえます。
また、故意ではなくても、同じ評価縦軸のグラフを並べる際に尺度が異なるものを並べてしまうと、片方がよく見えてしまう可能性もあるため注意が必要です。
誤解を招く表現
とらえ方によってはより良く見えたりしてしまうような表現も控えましょう。
実際、自社製品への愛着から本当にそう思えてしまったりすることもあるので注意が必要です。
間違っては無いけど
自分たちにも不利益を被る可能性もあります。
事例と対策
【事例1】あいまいな表現
以下の記述があるかどうか、注意しましょう。
結構日常で使いそうな表現が多いですね・・・気をつけねば。。
【事例2】添付文書の範囲外の記載
その製品の公式な使用方法は添付文書が基本となっています。
その最も正しいはずの添付文書と記載が異なったり、そう見える表現におけるプロモーションは厳禁です。
以下の点に注意しましょう
●用法及び用量に関わる承認範囲外の記載はしていない?
用法及び用量に「適宜増減」とあっても、用法及び用量に明記された範囲の記載にとどめましょう!
●海外と国内で承認された効能又は効果、用法及び用量が異なる場合、国内の承認内容がしばり表現も含め正確に伝わるように明確に書き分けれてる?
●参考情報を特徴のように表現していない?
●効能効果を誤解させる表現になっていない?ARB治療薬で脳卒中に効果あるよとか
●発売から1年以上過ぎているのに新発売、新しいなどの表現が残っていない?
●作用機序に記載されていない作用点にも効果があるような表現をしていない?
誹謗・中傷にあたる表現
営業してしまうと、どうしても自社の製品への愛着や売上を上げたいという気持ちから、自社品の話が多くなるのは仕方ないことです。
しかし、そこで自社品の位置付けを話す場合などに、他社品の欠点や不利な点を強調するのはNGになります。
臨床成績にあたっては他社品の評価結果の解説をするだけでもNGです。
【事例1】他社品に対する記載
臨床比較試験は2群間以上を比較する試験なので、優越性を検証できた場合などは試験群が対象群に勝った結果となります。
そうなると、なぜ試験群がよかったのか、対象群は悪かったのかと論じたくなるとは思いますが、他社品に対する結果や評価を解説することはNGです。
これは他社品が劣っていたと説明することがどうしても見方によっては誹謗中傷にあたりかねないからだと思われます。
出典論文に他社品解説の記載があったとしても、その内容は掲載することはできませんので注意しましょう。
その他、添加物や包装、デバイスやシリンジなどを比較したデータを記載する場合も、自社品の結果のみを記載し、他社品の結果については記載しないようにしましょう
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